More Than Us過去セミナーより ~ 私たちの生命は生物学 ~

More Than Us過去セミナーより ~ 私たちの生命は生物学 ~

More Than Usでは2020年から2021年にかけて、動物福祉・地球環境問題について包括的にお話しする4回シリーズのセミナーを開催しました。ブログ記事の形でその内容をご紹介します。

「私たちの生命は生物学」と題したシリーズ3回目のセミナーでは、46億歳の地球とそこに住む命の足取りを地球の誕生からたどりました。

隕石がぶつかり地球の軸が傾いたことで、地球には様々な気候と環境が生まれます。最初は酸素もなく生き物もいなかった地球。そしてついに、最初の単細胞生物が水中に現れます。私たちのようなDNAも持たず、光合成もできなかったこの微生物が熱と硫黄を消費し酸素を作り出したのです。

そこから地球には、様々な生物が現れては消えていきます。カンブリア紀に爆発的に生物の種が増えた後、植物・動物はどんどん大きくなっていきました。爬虫類が地上を支配するようになり、恐竜が登場。恐竜は進化の観点から非常に成功した生物ですが、身体が大きいため食物をたくさん必要としました。

そして6千 600万年前、また別の惑星が地球にぶつかり、地球を煤が覆ったことで、植物が絶滅。草食恐竜は食べものがなくなり、その草食恐竜を食べていた肉食恐竜も死に絶えました。恐竜の絶滅です。

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恐竜の絶滅は、生態系(ある場所にある土や空気や水などのひとかたまり)には波及効果があることを教えてくれます。惑星は恐竜にぶつかったのではなく、植物が地球への惑星衝突の結果死に絶え、それによる食べもの不足で恐竜が死に絶えたのです。ですから特定の生物種が絶滅するとき、その影響はその生物にだけ及ぶのではなく、すべてのつながっている生物に及ぶ、ということです。これは大切な教訓です。

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恐竜・その他の生物が絶滅し、生き残ったのが私たちの最初の哺乳類の祖先「アデロバシレウス」です。ネズミほどの大きさのこの生物が、私たちほ乳類すべての祖先なのです。この生物とそれに続いた初期の哺乳類はみな、恐竜を避けるため夜行性で木の上に住んでいました。

このアデロバシレウスは目が大きく嗅覚が発達していたのですが、そこから得られるたくさんの情報を処理するために大きな脳が必要でした(恐竜はクルミの実ほどの大きさ)。

これだけ大きな脳を持つ動物は地球の歴史上はじめてで、さらに、そのため成長により時間がかかり卵でなく赤ちゃんを育てるというスタイルが発達しました。恐竜のいない地球でこうした生物が繁栄し何百万年もかけて多様な哺乳類に枝分かれして進化していきます。

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この何億年もかけてつくられてきた地球のシステムは、人間が作ることはできません。これだけ地球に影響を及ぼしている人間ですが、人間が地球に出現したのは、地球の歴史をカレンダーに例えると、12月31日の夜11時、という、非常に最近のことなのです。

何十・何百億年をかけて培われてきたものを簡単に取り換えることはできないこと、私たちはこれを忘れてはならないのです。

More Than Us過去セミナーより ~ 卵と草原と動物解放:アニマルウェルフェアってなあに? ~

More Than Us過去セミナーより ~ 卵と草原と動物解放:アニマルウェルフェアってなあに? ~

More Than Usでは2020年から2021年にかけて、動物福祉・地球環境問題について包括的にお話しする4回シリーズのセミナーを開催しました。ブログ記事の形でその内容をご紹介します。

「卵と草原と動物解放」と題したシリーズ2回目のセミナーでは、やわらかく「アニマルウェルフェアとは何か?」を考える1時間を目指し、まずはよく知られる「5つの自由」を「うちの子」に当てはめることからスタート。ドッグトレーナーで More Than Us メンバーの Misaki から、犬のストレスへの対処方法として「ストレスにうまく向き合えるようにしてあげる」ことについてお話しました。

犬の写真

そこから、5つの自由を野良猫、動物園や水族館の動物、さらには家畜に当てはめるとどうか?と少し考えていただきました。例えば野生のイルカは種類によっては1000キロ以上にもわたっていること、それを考えるとどんなに広い水族館でも5つの自由の5番目(正常な行動を表現する自由)は確保できないことなどを紹介しました。

そして、もともとアニマルウェルフェアは「人間による動物の支配の歴史」への反動であったことをお話しました。西洋では古代ギリシャ時代の哲学者やユダヤキリスト教の要素を基盤としているとされる、人間優位の歴史です。17世紀には「動物は機械である」とする考えが最高潮に達し、やがてその反発としての現代のアニマルウェルフェアの芽生えに続きます。

写真:18世紀の啓蒙主義の思想家、ジェレミー・ベンサム

問題は、彼らが思考できるか、ということでも、彼らが話せるか、ということでもなくて、彼らは苦しむことができるか、ということである。 

ジェレミー・ベンサム

18世紀には、後に多くのウェルフェア家が引用する上記の有名なセリフを思想家ベンサムが残し、現在の、痛みや苦しみを感じる動物には人間は配慮をすべきというアニマルウェルフェアの考えが生まれています。5つの自由が出てきたのは1960年代のイギリス。これは家畜の扱いについて厳しい批判をしたルース・ハリソンの『アニマル・マシーン』という本がきっかけです。

現在、最もよく知られる関連著作のひとつに哲学者ピーター・シンガーの『動物の解放』があります。シンガーは動物への「差別」を「種差別」とし、人種や性別に基づいて行われる差別と同じとし、痛みや苦痛を感じる生き物たちへ、人間からの配慮の「枠」をいかに拡大できるかを問いかけています。

「うちの子」たちはお肉をたくさん食べています。卵や乳製品のパッケージによくある広々とした草原とは裏腹な現状。人間の管理下にある他の動物たちも同じことです。「うちの子」の幸せとは格段に違うレベルです。

セミナーの最後に、自分たちに何ができるか?を一緒に考えてみました。まずは「知ること」。そして自分で考えてみてから、アクションを取ること。人間はこの地球に暮らす以上、誰しも動物に関係のない人はいません。アニマルウェルフェアは「動物好きな人」が考えることではなく、人類みんなに関係のある問題である、だから関係ないと言っている人に考えてもらうことが大切、ということをお話しました。

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考えてもらうにはどうしたらいいか?こうしたことを一気に一人で解決することはできませんし、無理をしすぎると怒りや分断を生むということをお伝えしています。たとえば「ビーガン」は難しくても基本は植物ベースで過ごしてみる「フレキシタリアン」スタイルなど、より人にも進めやすい柔らかいやり方も今はたくさん選択肢があります。できることからはじめよう、月並みですがそんな話で締めくくりました。

数万年の時を超えるパートナー ~ 人と共に進化した犬の食事情|More than us

数万年の時を超えるパートナー ~ 人と共に進化した犬の食事情|More than us

犬・猫との暮らしと地球温暖化~Pawprintを一緒に考えよう~」の記事では、気候変動問題について考えるにあたって、特にお肉メインの食事を犬に与えることが課題になるということをお話ししました。「そうは言っても、お肉をあげないとダメなんじゃないか?」という疑問はどうしても湧いてきます。ですが、犬が人間と共に遂げてきた進化の道のりをたどると、「絶対お肉じゃなくても大丈夫なのかな?」と視点が広がるヒントが見えてきます。この記事では、犬が人間との生活で遂げた進化と、そこから見えてくるライフスタイルの可能性についてお話ししたいと思います。



犬と人間との長い付き合い:狼から狩猟のパートナーへ

犬と人間との長い付き合い:狼から狩猟のパートナーへ

まずは、犬と人との出会いまでさかのぼってみましょう。犬の祖先である狼と人間はいつ出会い、狼はいつ「犬になった」のか。出会いは恐らく3万年ほど前のヨーロッパだったのではないか、など様々な説がありますが、犬と人間との縁は「万年単位」の大昔にさかのぼります。2017年には、サウジアラビア北西部にある遺跡から犬と共に狩りを行う人間の姿を描いた岩絵が発見されました。紀元前7~8世紀に描かれたであろうとされるこの岩絵からは、人が犬と共に高度な戦略を用いた狩猟をしており、犬がすでに大切な狩猟のパートナーとして管理されていた可能性があることが分かったそうです。(National GeographicJournal of Anthropological Archaeology

犬と狼は違う生き物:人との暮らしで変化した犬の食生活

何万年も前に始まった人間との生活の中で、犬は人間が食べる物を食べられるように進化していきました。犬にとって最も自然・理想的な食事として、狼の食事(wolf diet)、バーフダイエット(BARF:生肉を中心とするローフード)という言葉を見ることが多くありますが、実は犬は私たちが思う以上に狼とは違う動物です。

その大きな違いの一つが、犬が持つ穀類を消化することができる能力。狼は持たないこの消化能力は、農耕を行う人類と共に暮らす中で獲得されていったと考えられています。つまり、犬は大昔から雑食で、お肉が中心の食事が必ずしも絶対ではないということが分かります。

私たちの気持ちは犬に筒抜け?人間の感情を理解するよう進化した犬

少し話題がそれますが、人間との生活で犬が遂げた進化は、消化能力だけではありません。新型コロナウイルスの蔓延にともなうステイホームという状況の中、犬を始めペットを家族に迎える人が増えました。2020年に海外でペットと暮らしている人を対象に行われた調査では、約90%の人が「ペットが精神的な支えになっている」と回答しています。(National geographic) 犬が自分の気持ちに寄り添ってくれているな、と感じる場面は日常生活の中に多くあると思いますが、犬の脳は人間の感情を理解できるように進化したということが研究により分かっています。(Plos One)また、別の研究では、怒った顔・ストレスを感じている顔をした人の写真を見せられると、犬がストレスを感じるということが分かったそうです。(Learning and Behavior

プラントベースから昆虫まで!?多様化するワンちゃんのグルメ事情

日本ではまだなかなか見かけませんが、欧米では肉がメインではないフードがすでに登場しています。プラントベースのヴィーガンフードや、昆虫プロテイン(!)を使用したものまで、実にバラエティ豊かです。また、肉や魚だけでなく豆類をたんぱく質源として使う、肉・魚を使わないヴィーガンレシピの日を設けるなど、レシピの幅を広げて手作り食を楽しむ人もいます。犬は(もちろん避けるべき食材はありますが)、私たちが思う以上に種類豊富な食材を健康的に楽しむことができる。そう考えると、ちょっとワクワクしてきませんか?

犬の食事と健康については、専門家のMikeから別の記事でまた詳しくお話しする予定です。お楽しみに!

犬・猫との暮らしと地球温暖化~Pawprintを一緒に考えよう~|More than us

犬・猫との暮らしと地球温暖化~Pawprintを一緒に考えよう~|More than us

皆さんのワンちゃん・猫ちゃんは毎日どんなごはんを食べていますか?フードの子、お肉・お魚メインの子、お野菜たっぷりの子、いろんなメニューの子がいると思います。毎日毎食、犬・猫の健康と幸せを願って用意するごはん。そのボウル一杯で地球の未来を変えられる!としたら、どうしますか?犬・猫が食べるほんの少量のごはんと地球の未来。到底結びつかない話題のようですが、実はそうでもないんです。この記事では、犬・猫との暮らしと地球温暖化の関係についてお話ししたいと思います。


目次


 

カーボンフットプリント:私たちの生活が環境に残す足跡

以前に比べて、地球温暖化や異常気象の問題はより日常的な話題としてメディアで見かけるようになったように感じます。2021年11月のCOP26で決定された「世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える」といった目標はニュースでも大きく取り上げられましたし(SDGs Action!, The Asahi Shimbun)、「脱炭素社会」「カーボンニュートラル」、そして「カーボンフットプリント」などの言葉も目にすることが増えてきたのではないでしょうか。

カーボンフットプリント(carbon footprint)は直訳すると「炭素の足跡」で、商品やサービスが製造され最終的に廃棄・リサイクルされるまでの過程で排出される温室効果ガスの量を数字で「見える化」したものです。商品やサービスの製造・提供と聞くと企業だけの問題のように感じますが、私達も日常生活のなかで温室効果ガスを排出しています。例えば、移動手段を自家用車から公共交通機関へ・公共交通機関から徒歩や自転車に変えたり、エアコンの設定温度を低めにしたり、よりエシカルな方法でつくられた製品を購入するなど、個人ができる取組は色んなところで紹介されています(WWFJICA、各市町村のホームページなど)。また、英語圏では自分が排出した温室効果ガスを簡単に計算できるサイト専用アプリも登場しています。そんな中、日本ではまだまだ注目されていないエリアがあります。それが、ペットと温室効果ガスとの関係です。

犬一頭はSUV4台分!?:うんちとお肉と温室効果ガス

犬・猫が排出する温室効果ガスが地球温暖化問題に影響を与える。初めて聞いたとき、筆者はピンときませんでした。「犬・猫って身体も小さいし(筆者の住んでいる地域には小型犬が多いです)、交通機関を使うわけでもないし、排泄物も吐き出す二酸化炭素もたかが知れてるんじゃない?」が正直な感想。そんな思い込みを180度変えてくれたのが、More Than Us代表でもあるMariが口にした「中型犬一頭を飼うことは、SUV車4台をもつことと同じ」という言葉でした。

中型犬一頭=SUV4台。これは2009年にニュージーランドの研究者が出した数字だそうです。さらに調べてみるとびっくりするような数字がどんどん出てきます。地球温暖化問題の原因としてよく目にするメタンガス。これは排泄物から発生するものですが、アメリカの研究によると、アメリカでペットとして人と暮らしている犬すべてのうんちを合わせると、その量は何と年間約510万トンにもなるそう!(Plos One)これが全世界のワンちゃんだったら、ワンちゃんだけではなく猫ちゃんも加えたら・・・と考えると途方もない数字になってきそうです。

温室効果ガスという点から考えた時さらに問題になるのが肉食です(肉食と地球温暖化についてはまた別の記事でお話しします)。同じアメリカの研究によると、犬・猫が食べる肉由来の二酸化炭素は年間64万トン。これは13万台の車が1年間に排出する炭素の排出量に匹敵するそうです。(Plos One)また、一般的な体格の猫1匹で年間310kg、中型犬で770kg、グレートデーンのような大型犬なら2,500kgの二酸化炭素を直接的・非直接的に排出する、という数字を出しているイギリスの研究者もいます。(How Bad Are Bananas P.131)

犬・猫との暮らしが環境に残す足跡:Pawprint

人間と暮らしている犬・猫が環境に及ぼす影響は世界的に大きな課題として認識されてきており、特に欧米では「Pawprint(四つ足の足跡)」として数年前から注目されていて、様々なアクションがすでにとられています。「肉食が原因と言われてもごはんでお肉をあげるし…」「肉食がだめってことは犬にベジタリアンになれってこと?」色んな疑問が頭をよぎると思います。ですが、実際には思ったよりもやわらかなアプローチで問題解決に貢献していくことができます。More Than Usでは、欧米ですでに行われている取り組みや、各分野の専門家のお話も紹介しつつ、私たちにとって大切なパートナーとの生活が環境に残す足跡「Pawprint」について何ができるかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。