by Mike | Jul 11, 2022 | ガイド&資料 , 私たちにできること
犬の食事:肉の割合はどのくらい?:市販のフード・手作り食の肉の割合
「犬とはお肉を食べるもの」。そう思っている方が大多数だと思います。実際、犬や猫のグッズを扱う専門店には肉の割合をとても高くした高級なフードがたくさん並んでいます。手作りの場合も、半分くらいの割合が肉、そしてBARF Diet では多くて 8割が(骨を含む)肉、となっています。
オオカミのような食事が理想?
たとえば、ドイツ発祥の BARF。生物学的に(Biologically) 適切な(Appropriate) 生の(Raw) 食事 (Food) の略と一般に言われます。たしかに高品質の生肉や新鮮な果物・野菜は、食事全体のクオリティからすると粗悪な加工フードよりずっと優れています。多くの場合、良質な素材を使った肉の含有量が高い加工フードも同じです。
これらは「犬の祖先であるオオカミのような」「自然の食事」に近いもので、「理想的」とされていますが、これについてもっとよく見てみましょう。
犬と狼は「生物学的に」同じか?
犬が人間と暮らすようになって1万年以上経ちます。祖先であった狼と犬の決定的な違い、それは何か?私たち、人間の影響です。
もともと人間が狩猟採集をしていたころから人間の残飯(狩った獲物の残りや食事の残り)をもらう代わりに人間の役に立つことで相互関係を築いていった犬という種 Canis lupus familiaris。狼(Canis lupus)とは別の生物種になったのです。
二つの種を分けている要素は多くあります(ほとんどの犬は狼より身体が小さいなど)。2013年に科学誌「ネイチャー」に掲載された研究 では、二つの種の全ゲノム塩基配列の再解読を行いました。そして、犬は家畜化の過程で狼とは異なる遺伝子36個を進化させたという事実が明らかになりました。
36個の遺伝子のうち半分以上は脳に関するものです。これによって犬は人の表情や行動を読み取り推測する能力を身に着けました。(例えば、人の悲しい表情に対して犬がストレスを感じている ことを明らかにした別の研究もあります。)
犬にとっての自然な食事は人の影響なしにあり得ない
「ネイチャー」掲載の遺伝子の研究では、もう一つ明らかになったことがあります。それは、「10個の遺伝子はデンプンの消化および脂質の代謝に重要なものであり、現在のイヌは肉食性のオオカミと比較してデンプンの多い食餌でもうまく生きていけるようになっている」ということです。
この研究は2013年に発表されていますが、例えば BARFは1993年にオーストラリアの獣医により出版された本がきっかけとなっています。30年前です。
農耕生活が始まり穀物や野菜を育てるようになった後も、犬は人の残飯をもらうことで生き延びてきた。つまりそれは犬が穀物(でんぷん質)を食べて生きてきたということです。そしてそのために必要な遺伝子を持つようにまで進化している。それが現代の犬です。
犬にとって自然な食事。それは、人間の暮らしとともにあるのではないでしょうか?実際、オオカミが食べている野生動物の肉と、現代の犬たちが食べている家畜の肉は、全く違っています。狭い場所で効率よく家畜を育てるために抗生物質やホルモン剤が多用されていることは、すでに周知のこととなりました。また、同じ動物である家畜の「幸せ」(アニマルウェルフェア)についても動物と暮らす私たちには気になる視点です。
ヴィーガン食を試してみよう
犬をこよなく愛する国イギリスで2022年4月に発表された研究 では、栄養のバランスが取れていればヴィーガン食方が肉の割合が高い食事に比べて犬にとってより安全で健康であることがわかっています。
2500頭を対象としたこの研究では、22種類の病気と獣医へ通う回数を指標としました。そのうち、獣医へ通う回数は、肉食の犬ではそのうちの半分が、ヴィーガンの犬では1/3が定期的に(病気のため)獣医へ通っていることがわかりました。
完全なヴィーガン食をしている犬もたくさんいます(猫は難しいです)。2021年の別の研究 では、犬にとってヴィーガン食が「まずい」ものではなく、おいしいものでありうる、ということもわかっています。
完全にヴィーガン食に切り替えなくても、肉の割合を減らすこと自体は、地球のためにも健康のためにもいいことです。最低でも週に1度くらいは、ヴィーガン食またはベジタリアン食にしてみませんか?
by morethanus | Apr 17, 2020 | ガイド&資料
みなさん、こんにちは。パフィーズナチュラルライフのCEO、マイクです。いつも私たちのサプリをご愛用いただき、ありがとうございます。
新型コロナウイルスの思いがけない広がりに、不安や戸惑いを感じていらっしゃる方も多いかもしれません。そこで、今日はパフィーズの代表として、また分子生物学と生物化学の分野に研究者として関わってきた者として、私が今感じていることをお伝えしたいと思います。少し長いですが、読んでいただければ光栄です。
私は驚いてはいません
まず、亡くなられた方や病気の症状に苦しんだ方がいることは胸の痛むことで、心からお悔やみ、お見舞いを申し上げます。
ただ、今回のウイルスの蔓延や世界中での感染者の「爆発的な」増加自体に、私は驚いてはいません。科学に親しんできた人は皆そうだと思います。それについて皆さんにお話したいと思います。
私たちのDNAの8%はウイルスのDNAです
ウイルスは人類の歴史が始まって以来、ずっとその一部であり続けています。私たちのDNAの8%が先祖から受け継いできたウイルスのDNAだと言われています。私たちの祖先も、ウイルスと闘いそして生き残ってきたのです。
DNAの8%がウイルスのものだからといって、例えば新型コロナウイルスが私たちのDNAを変えてしまうわけではありません。新型コロナウイルスは、卵子や精子に影響を与える特定のタイプのウイルスとは異なるグループに属しているからです (注)。わかりやすく言えば、8%という数字には「私たち人類や動物の祖先はウイルスと長いこと共存してきた」ということが単純に表されているのです。
注:専門用語で「内在性レトロウイルス」と呼ばれます。
~ミニコラム:ウイルスのDNA~
ウイルスはそのDNAを私たちの細胞の中に挿入し、細胞がさらにウイルスを製造するように仕向けます。このウイルスのDNAは私たちの細胞に残ることがあり、次の世代に受け継がれることもあります。人類の歴史上、何度もそれが繰り返された結果、ウイルスのDNAは私たちの一部となりました。
これまで人類は運がよかったのです
私のように科学の分野で研究をしている人は、これまで人類は運がよかったことを知っています。なぜなら、近代になって人類が遭遇したウイルスは、エボラやSARSのように致死率が高くても感染力が低いか感染スピードが遅いものか、今回の新型コロナウイルスのように感染力は非常に強いが致死率は比較的低いもの、であったからです。
つまり、致死率が非常に高くて感染力も非常に強いウイルスには、まだ本格的には遭遇していないのです。しかし、だからといってそのようなウイルスが出現しないという確証はありません。
科学者の予言が的中しました
科学の分野にいる人は、新型コロナウイルスのようなウイルスがいずれ深刻な状況を引き起こすだろうと知っていました。例えば、去年出版された論文には、次のように書かれています。
将来のSARS または MERS (中東呼吸器症候群コロナウイルス)のようなコロナウイルスの発生が、コウモリから始まる可能性は非常に高い。さらにそれが中国を発生地とする可能性も高くなっている。
US National Library of Medicine, National Institutes of Health
この論文の著者は、中国・武漢大学の研究者たちでした!
グローバル経済がウイルスを頻繁に蔓延させるのです
これは、多くの人が自由に世界中を旅行していることと、特に私たちのような経済の発展した国が世界の他の地域から安い商品を買えることの代償です。グローバルな世界は、素敵なことです。異なる国の人々が商品やサービスを提供するために協力するのは、ワクワクすることでもあります。ただし、私たちはその代償にも気づかなくてはなりません。
今回のことはその一つです。そして私たちは本当はそれに驚くべきではないのです。新型コロナウイルスが例のないスピードで広まったのは、世界中の人たちが皆、物理的な移動をしなくても、経済活動という糸でつながっているからです。海外からオーガニック素材を購入しているパフィーズにとっても非常に重要な問題ですが、今は私の話の続きを聞いてください。
残念ながら、この現象はまた起きます
新型コロナウイルスが攻撃する細胞は、ほ乳類には比較的共通した細胞です。ですから、他の動物に感染する可能性があります。パフィーズでも猫への感染についてすでに書きましたが、今のところは犬や猫というペットに関しては心配する必要はありません。しかし、将来的にはまだはっきりしたことは分かりません。
ウイルスにとって種を超えて感染させることは、本来ものすごく難しいことです。それなのに今回見ていると、何種もの生物を超えた感染が起きています。種を超えた感染が起きると、それだけ感染拡大の範囲も増えますし、ウイルスが変異する可能性も高くなります。みなさんを不安にさせるつもりではないのですが、「今の状態よりもっと悪くならないとは決して言えない」ということを知っておくことが、今はとても大切です。
「中国のせい」じゃないと思います
現在、日本を含め多くの国が、「中国のせいだ」と言います。私の母国、アメリカ合衆国の大統領もそう発言したことを私はとても恥ずかしく残念に思っています。
今回のことは、どこかで起こるべくして起こったことで、特定の国や地域の問題ではありません。強いて言うなら、すでに述べた通り、海外の安い商品を享受している私たちみんなに責任があるのです。
そして、コウモリが悪いわけじゃありません
そして、感染源としてのコウモリの駆除が起こっていますが、これも間違いです。コウモリには1,000以上の種類があり、それぞれに多少生態は異なりますが、全般に非常に多くのウイルスを保持し共存しています。今回の新型コロナウイルスも、例えばSARS と同様にコウモリから別の動物に感染し(センザンコウ、ヘビ、あるいはブタなどの家畜?)、そこから人間に感染したと考えられています。つまり、どんな動物からも発生する可能性があったということです。
~ミニコラム:中国、コウモリ、そして私たち消費国の生活~
アジアやアフリカで野生生物の市場が大きくなったのは、もともとは伝統的な農業などに従事していた人が、土地や仕事を追われ、生活のために始めたことが大きな原因です。そして土地や仕事を追われる理由は、経済の豊かな国からの大規模な投資や事業です。一つの例として、野生生物の生息地に近いところで工場畜産(大規模な畜産)が始まると、異なる種を超えて感染がおこりやすくなり、畜産に従事する人や食肉を扱う人への感染が起こります。ブラジルでは森林破壊の70%は放牧産業が原因です。東南アジアでは森林破壊はパーム植林が圧倒的な原因です。パーム油はスナック菓子からシャンプーまで、私たちの日常のあらゆるものに使われています。
Nellemann, C., INTERPOL Environmental Crime Programme (eds). (2012) Green Carbon, Black Trade: Illegal Logging, Tax Fraud and Laundering in the Worlds Tropical Forests. United Nations Environment Programme, p. 34.
私たちの命は生物学です
私たちは、この経験から学ばなくてはなりません。これまで(私の国の大統領を含め!)多くの人が科学者の警告を無視してきました。今、それが変わりつつあります。例えば60年代など、宇宙への関心から科学者が非常に注目された時代がありました。日本では科学技術や医学の発展に貢献する科学者がたくさんノーベル賞を受賞しています。
ひとつ、生きていくために大切な分野が見落とされています。それが生物学です。私たちの命は生物学です。人間も、犬も、猫も、他の動物や植物も、細胞からできています。それを学ぶのが生物学です。そして、動植物が環境や外的要因からどんな影響を受けるかの研究でもあります。
生物学の視点では、身体は原始のまま
例えば、食というのは動物にとって本来とても原始的なものです。科学技術やインターネットがどんなに発展しても、私たちの胃も腸も肺も心臓も、人間がこの地球に現れたころからそれほど変わっていません。
私が、自然の食べ物(スーパーフードやハーブ)が生物に最適だと思うのは、これが理由です。食文化は複雑なレシピとともに様々な加工品やインスタント食品を生み出しました。でも身体は生物学の視点では、原始のままなのです。そして私たちの食べ物は、どれももともとは自然界からやってくる。生物学が今後、もっと身近になればいいと思います。
「昨日と違うことを今日聞かされる」ということに憤らない
今必要なことは、専門家の意見を聞くことです。同時に、どんな分野でも科学者がすべてを知っているわけではないと理解することも大切です。専門家は限定的な情報の中でベストを尽くしています。事実は常に流動的なものです。新型コロナウイルスについては、多くのことがまだ解明されていません。ですから昨日は一つのことを聞いていたのに、今日になると違うことを聞くかもしれません。これは発見を繰り返す科学の性質でもあります。それにイライラしないようにすることが大切です。
幸せとは、本来もっと原始的なものかもしれません
よく言われるように、今は試練の時です。家にいて、友人に会うことも猫を外に出すこともできないし、犬を他の犬と遊ばせることもできるだけ控えなくてはなりません。
でも、できないことに注目するより、できることを考えましょう。これまで人類が何をしてきたか、そして私たちのあり方が変わればどんな未来が描けるのか。それを考える時間を与えられたと思ってもいいのではないかと私は考えています。
パフィーズのお客様は、犬や猫との暮らしを本当に楽しんでいると私たちは感じています。そして、ペットと一緒に過ごせる限られた時間を大切にすることは、私たちに何が本当に大切かを教えてくれます。幸せとは、本来もっと原始的なものなのかもしれません。パフィーズでも、改めてそうしたことを考える時間としたいと思っています。
文中の参考リンク
Yi Fang et al. Bat Coronaviruses in China. US National Library of Medicine, National Institutes of Health (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6466186/ )